想いをかたちに

1995年1月17日。
あれからまもなく14年を迎えようとしています。


あの時、あの瞬間。
当時も今も、私は愛知県西部に住んでますが、私も地震の揺れで目を覚ましました。
1分?…ひょっとしたらもっと長かったかも、もっと短かったのかも知れませんが…
とにかく長く感じられ、今まで自分が体験した地震とは違うな、という感じはしました。


地震・台風の時はNHK…と思ってテレビを付けると、案の定臨時ニュース。
日本地図に各地の震度が記されていきます。
名古屋の震度は3。もっと強かったようにも思えたのですが、それは揺れが長かったせいでしょう。
そして、たしか京都か大阪に「5」の表示。
関西は地震が少ない、という固定観念が自分にもあり、ちょっと意外な感じがしました。
しかし早朝。いつもは7時くらいに起床するので、ひとまずテレビのスイッチを切り、再び床につきました。
寝ぼけまなこでテレビを見ていた私は、ある重大なことをスルーしてしまっていたのです。


「神戸」の震度が表示されていなかったことを。


7時頃再び目覚め、テレビを見ると、信じられない光景がそこにはありました。
崩れたビル、あちこちで不気味に立ち上がる炎と黒煙、横倒しになった高速道路…


戦争も震災も経験したことのない私にとって、嘘に思えるような光景。でもそれは真実。
不謹慎との非難を覚悟で言うなら、さながら怪獣に蹂躙された都市の光景のよう。
私の乏しい人生経験では、それ以外に例えようがありませんでした。
そして、時間が経つごとに増えていく死者数に、言いようのない恐怖を覚えました。


先日からちょこちょこ「ゴジラ」について日記を書いていますが、
怪獣映画の魅力の一つが、「ぶっ壊しのカタルシス」にあることを否定しません。
でもそれは、あくまでも絵空事だから。
第1作「ゴジラ」に空襲の体験をダブらせた方は相当多かったでしょう。だから初代「ゴジラ」は怖かったといわれるのだと思います。

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現実の震災の話と絵空事である「ゴジラ」を結びつけることを不愉快に思われる方もいらっしゃるであろうことは承知の上です。
承知の上であえて、書きたいことがあります。もう少しおつきあい願えれば幸いです。


映画監督・大森一樹さん。
彼は「ゴジラvsビオランテ」「ゴジラvsキングギドラ」で監督・脚本を担当し、
ゴジラvsモスラ」で脚本を担当、以後、「ゴジラ」から一旦大森さんは手を引きます。


震災の翌年。
ゴジラ死す」をキャッチコピーに、平成vsシリーズの完結編となる「ゴジラvsデストロイア」が製作されます。
スタッフの中に、「脚本:大森一樹」の名がありました。
監督らの口説きで、大森さんはシリーズ最終作の脚本づくりへの参加を決めたのだそうです。


芦屋市に居を構える大森さんは、ご自身も1年前の震災の被災者でした。
そんな大森さんの想いが、この映画に込められていると気付いたのは、劇場で映画を見てからずっとずっと後のことでした。


冷凍弾、超低温レーザー…
それまでのvsシリーズに出てきたスーパーXやメーサー戦車といった自衛隊の架空兵器は、「冷凍兵器」を装備して現れます。
映画の設定としては、対ゴジラ戦はGフォースに任せ、自衛隊は大規模火災や原発事故(あるいは核攻撃等)対策に特化した装備をそろえた…というものですが、
この冷凍兵器には、大森さん自身の震災の経験が影響している、のだそうです。(参考:Wikipedia ゴジラvsデストロイア)
私はWikipediaの記事を見るまで、そのことに気付きませんでした。


「超低温レーザー」なるものが科学的に実現可能なものかどうか知りません。あるいは科学的には噴飯ものなのかも知れません。
でも、さきのエピソードが本当なら、脚本を練りながら大森さんは考えていたのかも知れません。
「もしこんなものがあったら…少しでも被害を押さえられたのでは…」と。


所詮絵空事。でも、その絵空事に、現実の体験から生まれた「想い」がミックスされていく…
エンターテイメントというものは、その場で消化して終わっていくだけのものでは無いはずです。
100年前の絵空事が、案外我々の身近に転がっていたりしますよね。


私の住む地域でも、「東海」だ「東南海」だと。人事ではありません。
ひょっとしたらこの文章を書いてる最中に地震が起こるかも知れないし。
私のつたないこの日記が誰かの目に触れたとき、すでにこれを書いた私は命を絶たれているかも知れないし。


絵空事に込められたであろう想いが、すこしでもかたちになれば…
直接ではなくとも、何かのヒントになれば…例え何十年、何百年かかっても。
そんなことを今日…あれから14年を迎える、その前日に…感じました。


最後に、もう一度。
絵空事」と「現実」を並べた今日の日記に不快感を覚える方がいらっしゃれば、お詫びいたします。
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