ハイケンスからの贈り物

ジョニー・ハイケンスという作曲家をご存じでしょうか。
1月22日の日記で、ある作曲家について調べている…と書きましたが、それがジョニー・ハイケンス(1884-1945)。オランダ人の作曲家です。


ジョニー・ハイケンス(Wikipedia)


図書館へ行ったりして調べましたが、結局Wikipediaに載っている以上の情報は見つかりませんでした。
彼が残した、今まで世に知られた曲はおそらくただ1曲。「ハイケンスのセレナーデ」のみです。


この曲は、戦時中のラジオ番組「前線へ送る夕」という番組で使用されていたそうです。
「前線へ送る夕」とは簡単に言えば戦地の兵士に向けた慰問放送で、音楽や演芸、兵士の家族からのメッセージなどを放送していたそうです。


なぜ、日本から見て「敵国」だったオランダ人の作曲家の作品を?とも思ってしまうんですが、
当時ハイケンスは、ドイツで音楽活動をしていましたからだと思われます。
ドイツのケルンで音楽を学んだという話もあるようで、おそらくそのままドイツにとどまり、第二次大戦を迎えたのでしょう。
どういう経緯でこの曲を慰問番組で使用したのかは定かではありません。


ドイツ降伏後、ハイケンスは祖国オランダへ帰りますが、待っていたのは「親ナチ」というレッテル張りだったようです。
ハイケンスがどの程度ナチスに協力的な活動を行ったのか知るよしもありませんが、
ともかく彼は囚われの身になり、やがて獄中死(自殺?)してしまいました。


そして戦後、これまたどういう経緯か分かりませんが、国鉄が客車列車の車内放送用チャイムとして、この曲の一節を使用するようになりました。
まもなく廃止になる「富士・はやぶさ」をはじめ、今もブルートレインなどで使われています。

聴いていただくと、音色の違いに気付かれることでしょう。
元々はオルゴールだったものが、おそらく摩耗・破損等で電子チャイムに置き換えられているためです。
これは列車と言うよりも車両ごとの違いですので、今日の「富士」と明日の「富士」が同じ音色とは限りません。
最後に流れたのはJR北海道の「スーパー白鳥」という特急電車のもの。
「客車」というこれまでの使用列車とは違い、しかも21世紀になって登場した新しい列車に使われた点が興味深いところです。


さて、ブルトレの「車内放送」ですが、だいたい21時頃から、朝6時から6時半頃まで、「お休みタイム」のため車内放送は休止します。
私が「はやぶさ」に乗る名古屋ではすでに「お休みタイム」。
従って、私にとってこの曲は「目覚まし放送」という印象が強いです。
この曲に続き、「皆様、おはようございます…」で始まる朝の車内放送。
顔を洗い、穏やかな瀬戸内海を見つめ、やがてお弁当屋さんが乗ってきて…
このチャイムを聴くと、そんなことを思い出します。


ハイケンスがドイツでどんな音楽活動を行っていたのか、他に彼が残した作品がないのか…残念ながらよく分かりません。
彼がこの曲を作った当時、自らの死後60年以上経った今も東洋の島国でこのメロディが流れるなどということは想像もしていなかったでしょう。
私にとっては、ブルトレの旅の想い出に欠かせない「贈り物」です。


↓こちらが原曲です。

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