一瞬のきらめき〜誰がブルートレインを殺したか(2)

futashizuku2009-02-15

サンライズ瀬戸・出雲」について探し物をしていたら、
金美齢さんの公式サイトで、サンライズ出雲について言及されている」という記事を見つけたので、サイトへ行ってみました。
島根県大田市行きは夜行列車でした  金美齢公式ホームページ/コラム (2009年01月28日)

飛行機が予定通り飛べなかった、という理由で、やむなく「サンライズ出雲」を利用されたようですが、
少なくとも記事を読む限り、金美齢さんは「サンライズ出雲」に好印象を抱かれたようです。
たまたま乗らざるを得なかった人に好感を得れば、ひょっとしたら何かの機会に再度利用してもらえるかも知れません。
逆に、最初の印象が悪ければ、二度と乗ってはもらえないでしょう。


昨日の日記で、「国鉄分割・民営化」がブルトレ衰退の根本原因だと述べました。
「誰が」殺したか、もう書いちゃったような気がしますが(笑)。
まぁまぁ。ことはそう単純ではありません。こんな反論があるでしょう。
「じゃあ北斗星やトワイライト、カシオペアサンライズエクスプレスは?」と。
いずれも、「JR」になってから誕生した寝台特急たちです。


青函トンネルが貫通したのは1985年。津軽海峡線開通は民営化後の1988年のことです。
青函トンネルは完成前後から採算性について疑問が持たれ、鉄道トンネルとしての利用そのものが危ぶまれたこともありました。
将来的に新幹線が利用する構想で建設されたものの、肝心の北海道新幹線はおろか、東北新幹線の残区間の着工自体いつになるか分からない当時としては、在来線を通すしかありませんでした。
そこで、採算性はともかく、魅力ある列車を走らせて、いつになるか分からない新幹線開通までの「つなぎ」としようと考えたのでしょう。
幸か不幸か、バブル景気に世が酔いしれている時代でした。


列車の構想そのものは、 実質的には国鉄時代末期にスタートしていました。
博多行き「あさかぜ」をモデル列車とし、寝台車のリフレッシュや豪華な内装の食堂車、新しい個室寝台やシャワールームを設置。
これらはのちの青函直通寝台特急に取り入れられます。
民営化の方針が固まると、特に財政基盤の脆弱な北海道会社の負担にならないよう、先行して一部の寝台車や食堂車の改造が行われています。
そして民営化。津軽海峡線開通まで1年を切り、JR北海道・東日本とも、従来の寝台特急のレベルを凌駕する個室寝台(ロイヤル)、予約制のコースディナーなどを取り入れ、
「豪華寝台特急」として津軽海峡線の目玉とすることにしました。 これが「北斗星」です。
高価な「ロイヤル」のチケットはプラチナ化し、JRの思惑通り、津軽海峡線の目玉列車となりました。


一方、青函トンネル開業当初、大阪から青森までの寝台特急日本海」一往復を函館まで延長し、取りあえず様子を見ていたのがJR西日本
一応食堂車だけは組み込む構想で準備をしていましたし、札幌延長も視野に置いていたフシがあるんですが、
北斗星」の成功に触発され、展望スイートルームや大きな窓のサロンカーなど、「北斗星」を超える豪華寝台特急を大阪〜札幌間に走らせる構想に転換しました。
それが「トワイライトエクスプレス」です。


北斗星」も「トワイライト」も、既存の客車の改造車でした。
トンネル開業ブームも薄れ、その後の景気の冷え込みもあり、「北斗星」は次第に利用客が減少します。
JR北海道は既存の寝台車をほぼ全車個室に改造することでなんとか利用者をつなぎ止めようとしました。
一方、JR東日本はのちに完全新製による全二階建て寝台特急カシオペア」を登場させます。
しかし、巨額の費用を投じて車両を新製しても、ペイできなければ意味はありません。
そのためでしょうか、「カシオペア」は全車A寝台。
しかも、「北斗星」一往復を置き換える形で登場したカシオペアですが、完成した客車は一本。
従って今に至るまで、最大でも隔日の運転しかできません。
かつて最大三往復あった「北斗星」はやがて二往復に、近年は一往復のみになっています。
かわって、「北の大地に新幹線」が、徐々に現実の話になりつつあります。


いずれの列車も、ビジネス等の利用客を考慮せず、「列車そのもの」を楽しんでもらう、という、従来あまり考えられなかった列車です。
これなどは、民営化の一つの成果であったかも知れません。


一方、「夜行列車」という特性を最大限に生かせる区間に新車が投入された例があります。これが「サンライズ瀬戸・出雲」です。
下りの東京発は飛行機の最終便より後。目的地には飛行機の初便より前に到着。
鉄道が有効に競争力を持てる土俵であれば、新車を投入する価値がある、という判断であったものと思われます。
そして事実、冒頭に紹介した金美齢さんのケースのように、飛行機の代替輸送機関として充分機能しうる列車です。
車両そのものは、機動力で勝る電車方式。
個室主体でありながら、豪華さよりも機能性に重きを置いた列車です。


20世紀も終わりに近づいた時期に登場した、対照的な「カシオペア」と「サンライズ」。
ここに寝台特急の未来予想図を描いたのはしかし、鉄道ファンという一部の人間に過ぎなかったようです。


次回、とりあえず完結予定です。
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