あの朝焼けは幻か〜誰がブルートレインを殺したか(3)

まずお詫びを。
前回、「次回完結」と書きましたが、1回延長させていただきます。
前回取り上げた、「サンライズエクスプレス」は、そもそもなぜ生まれたんだろう、と考え込みまして。
不思議です。景気が低迷していた頃、あのJR東海を巻き込んでまで寝台車を造った、というのが。
もっとも、東海区間は上下とも深夜帯=自社エリア内での乗客の減少は少ない、ということで、実はJR東海にはそこそこおいしく思えたのかも知れません。


名古屋からは乗れない列車ですが、岡山駅で上り列車の連結を見たことがあります。
その時ケータイで撮った写真は不鮮明だったので、今回人様のYouTube動画でお茶を濁させていただきます。

さて、「サンライズエクスプレス」はなぜ生まれたか。取りあえず、手元の本をひもときました。

「近年、寝台列車は地方空港の整備や夜行バスの発展、加えて使用車両の車齢も高いため、アコモ改造といった従来の施策では、お客様のニーズをとらえることが困難になりつつある。
そこで、新車投入により抜本的な改善を図ることとし、JR西日本JR東海が共同で285系寝台特急電車を製作した。(以下略)」(JR西日本/編集部)
 JR全車両ハンドブック2005 NEKO PUBLISHING より抜粋

同じ項には「寝台列車復権」という言葉も掲げられており、JR西日本もかなりの期待を込めて世に送り出したであろうことを伺わせます。
ちなみにJR東海と共同で製作したのは、車両使用料の相殺が目的と思われます。(車両使用料については次回触れます)


さて、「寝台列車復権」を狙い、「昇る太陽」をモチーフに、JR…というより鉄道ファンの期待を背負って登場し早くも十年。
復権」は果たせたのか…などと問うまでも無いでしょう。
JR西日本株主総会で「サンライズ」の採算性について株主から問われ「単体では赤字」と会社側が答えた、という話がネット上にありますが、
所詮又聞きで確たるソースがあるわけではないのでなんとも言えません。
しかし儲かっているのなら、当時一往復残っていた東京−下関間の「あさかぜ」にも追加投入すれば、「新車投入により抜本的な改善」の効果を期待できたでしょう。
実際、この電車には「サンライズ瀬戸・出雲」の行き先表示に混じって「あさかぜ 東京」「あさかぜ 下関」などの表示が入っています。まさかネタで入れたわけではないでしょう。

あるいは、交直両用版「サンライズ」(東海道山陽線は直流電化、九州内は交流電化。「サンライズ」は直流専用車)を開発し東京−九州間特急にも投入し得たのかも知れません。
少なくとも「サンライズ」登場時、私はそんな淡い夢(あるいは妄想)を抱きました。
しかし、夢は夢のまま終わりそうです。
寝台車のような「特殊な」車両は、プレミアム性を持たせて高い値付けにしないと維持できないのかも知れません。


昨日の日記での金美齢さんの件でも、飛行機が飛ばないというイレギュラーな状況の中で列車を利用したに過ぎないわけで、
そういう「隙間市場」でなんとかかんとかやりくりしてやっている、というのが現実なのでしょう。
昨日「夜行列車」という特性を最大限に生かせる、と書いたし、実際そう思ってるんですが、一般への知名度はどの程度なのかと。
安い小ぎれいなビジネスホテルは、そこそこの都市ならいくらでもありますし。
最近は、「夜行バスモドキ」が台頭してますし。(個人的にはあれは乗りたくない、です)


3月14日以降、東京駅を下る寝台特急は「サンライズ瀬戸・出雲」のみになります。
寝台列車復権」を謳って登場したこの列車が、(おそらく)寝台特急の最後の証人になると、10年前誰が想像したでしょうか。


著名な「鉄道アナリスト」による寝台列車への提言本ですが、Amazonでのカスタマーレビューでは芳しい評価ではありません。
推測、妄想、机上の空論等々…
この手の本は鉄道ファンしか買わないでしょうが、そのファンからも「机上の空論」と切って捨てられています。
この方の本は何冊か読んでいますが、確かに荒唐無稽な「改善案」も散見されます。
あと、少なくとも技術面に関してはこの方の知識はやや「怪しい」です。


次回こそ、完結編です。
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