同床異夢の、その先に〜誰がブルートレインを殺したか(4)

futashizuku2009-02-17

たびたびのお詫びで申し訳ありません。
ブルトレの問題について語る際、どうしても運賃・料金についてスペースを割かねばなりません。
当初は最終回でさらっと触れるつもりでいましたが、それでは(私の考える)問題の根本が曖昧になってしまうため、
たびたびの延長で申し訳ありませんが、次回を総括・完結編とさせてください。


さて、1回目の最後に「ブルトレの収入が、距離に応じて4社に分配される」という意味のことをさらっと書きました。
これは少々言葉足らずで、正確には「一枚一枚の切符の収入が」と言うべきでした。
ここで「富士・はやぶさ」の走る区間の管轄会社をを書いておくと、
東京−(東日本)−熱海−(東海)−米原−(西日本)−下関−(九州)−大分・熊本
となります。ちなみに米原駅には運転士交代のため停車しますが、客車のドアは開きません。(営業上は通過扱い)
それぞれの区間の距離を運賃計算キロベースで表示すると、
東京−(104.6km)−熱海−(341.3km)−米原−(654.4km)−下関−(144.7km)−大分
                                           −(197.4km)−熊本 
全行程は大分行き「富士」1,245.0km、熊本行き「はやぶさ」1,297.7km。
※「運賃計算キロ」はあくまで運賃計算用のキロ数に過ぎず、実際の走行距離ではありません。以後「距離」の話は「運賃計算キロ」として話を進めます。


例えば私が「はやぶさ」を利用するのは「名古屋−大牟田」間。
この場合、私の支払った運賃、特急料金、寝台料金はJR東日本には配分されないはずです。JR東海エリアから乗車したからです。
もっとも、私がたまたま新宿駅でこのきっぷを買ったとすれば、いくらかの発券手数料がJR東日本に入る仕組みになっていますが、その点は今回無視して話を進めます。
ある人が「横浜−下関」で利用すれば、運賃・料金はJR九州には配分されません。
もっと極端に言えば、「大阪−広島」という利用の仕方なら、運賃・料金は全てJR西日本に行きます。

はやぶさ」寝台券。下方の(3-タ)表示の「3」は発行会社。北海道1、東日本2、東海3、西日本4、四国5、九州6。「タ」は他社線利用を意味する。


これをまず頭の片隅に入れていただいて、JRの運賃・料金制度について。
基本的な制度、というか考え方は、実は国鉄時代からほとんど変わっていません。
また、会社をまたがっても、運賃・料金は通算して計算されます。
「分割民営化に当たって、利用者が不利益を被るのを極力避ける」という趣旨でしょうし、あるいはそれが事実上の公約だったのかも知れません。
JRの運賃は、「遠距離逓減制」という考え方に基づいています。長距離で利用するほど、キロあたり運賃は安くなる、という考え方です。
本州3社の幹線運賃の場合、100kmなら1,620円。1000kmなら11,970円。一目瞭然です。


一方「特急料金」は、ブルトレの場合、「A特急料金」の「自由席特急料金」が適用されます。(JR東日本:きっぷに関するご案内)※寝台料金に指定席料金が含まれている、という考え方のため。
ごらんの通り、601km以上は3,150円で頭打ちです。
ちなみに下り列車で考えると、東京から601km以遠に該当するのは神戸市内の垂水駅(深夜、もちろん通過)以西。
名古屋からなら山口県の柳井(6:23)、大阪からなら博多(10:10着)、中津(10:00着)。
ただ名古屋(22:47発)ならともかく、1:08発の大阪からの利用は微妙です。
安いビジネスホテルを探して、朝一の新幹線を使えばもっと早く九州入りできます。
寝台車に乗るのであれば、ほとんどの乗客は601km以上の利用と考えてまず差し支えないでしょう。つまり、ほとんどの乗客の特急料金は3,150円で頭打ちです。


寝台料金は、B寝台・B個室がいずれも6,300円。A個室は13,350円。終点まで乗っても、例え次の駅で降りるとしても、料金は不変です。


特急料金はほぼ頭打ち。寝台料金は不変。ここを頭の中に置いておいてください。


さて、運賃については距離按分。特急料金も同じと思われます。
寝台料金については、実は自信がありません。
ただ、基本的に2社以上にまたがる運賃・料金は距離按分、というのがJR各社間の申し合わせらしいので、やはり距離按分として話を進めます。


最初に「富士・はやぶさ」のJR各社ごとの距離を掲載しましたが、あることに気付かされます。
東日本は合計キロ数の1割未満、九州は富士が12%、はやぶさが15%」
つまり両端の会社への収入が少ないのです。
それに加え、途中から乗る客、途中で降りる客を勘案すれば、東日本、九州両社は収入面で著しく不利、ということになります。
しかも、距離が伸びれば運賃は割安、特急料金は頭打ち、寝台料金は不変。
下り列車基準で、起点の東日本本意で考えれば、「できるだけ東京駅から乗ってもらった方が良い」。しかし「あまり遠くまで乗ってもらっても儲からない」。
一方九州は、「距離按分を考えれば、できるだけ終点近くまで乗ってもらった方が良い」。ただし「あまり遠くから乗ってもらっても儲からない」。


ちょっと混乱したでしょうか?
私も書いてて「大丈夫だよな?」と確認しつつ、という感じです。
※重大な事実誤認があれば、ご指摘くだされば幸いです


「分割民営化に当たって、利用者が不利益を被るのを極力避ける」ために引き継がれた、旧国鉄の運賃・料金体系。
JRなんて十把一絡げの利用者は気軽なものです。
寝台特急はバスや飛行機に比べ割高だ。利用者増のために値下げすべきである」
寝台特急のサービスレベルも速度も低い。新車を入れてスピードアップせよ」と。
運行している当事者にとってはそれどころではありません。
全国一律経営時代のルールに縛られ、一方では各社に利益を配分しなければならない。
かといって値上げもままならない。値下げなんて余計にできない。
この矛盾した状況の中では、薄利少売の寝台特急などばかばかしくてやっていられません。
少なくとも私が経営者なら、そう考えるでしょう。


ブルトレから離れますが、「18きっぷ」も、元々は赤字でどうにもならなかった国鉄が、
通学定期需要がなくなる夏休みや冬休みに少しでも増収を…と苦肉の策で造ったきっぷです。
JRの本音は「こんなきっぷ、無くしたい」のかも知れません。


長らくのご乗車お疲れ様でした。いよいよ明日、終着駅です。
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